マッシュのオモハラおしゃれ散歩
2015.07.31

ファッション業界人が語る“私と原宿・表参道”(6)橋口麻紀 さん

原宿・表参道と切っても切り離せないのがファッションです。そこで、このコーナーでは、この地域を舞台に活躍するファッション業界関係者にスポットを当て、街との係わりやお仕事について語っていただきマッシュ!

今回のゲストはPRコーディネイターのほか、オリーブオイルソムリエとしても活躍中のモードゥス ヴィベンディ代表 橋口麻紀さんです。

モードゥス ヴィベンディ代表 橋口麻紀さん

橋口麻紀さん橋口麻紀さん

橋口麻紀さん
東京生まれ。20代に、創設直後のイタリアのアイウェア企業の日本法人 ミラリ ジャパンに入社。ミラリ ジャパンでPR、販売促進を中心にマーケティング業務なども幅広くこなす。その後、2006年に独立し、ほどなくしてマーケティング、コミュニケーションを専門に行うモードゥス ヴィベンディを立ち上げる。独立後も継続してミラリ ジャパンのPRに携わるほか、さまざまな人気ブランドおよび企業に関わる。2013年にオリーブオイルソムリエの資格を取得し、その魅力を伝える活動も展開。また、友人である、大越さおりさんとともに国内外をとわず、日々を豊かに暮らすため良質なモノを消費者に伝えるための企画、スマウリー プロジェクトを昨年立ち上げ活動もしている。


驚きの連続だったイタリア系企業でのお仕事

ファッション誌の世界でお世話になったことのない人はいないのでは?そんなファッション業界の有名人がPRコーディネイターの橋口麻紀さんです。数々の人気ブランドや企業に携わっている橋口さんですが、その経歴の中でももっとも長い時間を過ごしたのが、アイウェアメーカー、ミラリ ジャパンです。まずはミラリ ジャパンとの出会いからお話を伺いました。

橋口さん:
ミラリ ジャパンはイタリアのアイウェアメーカー、ルックスオティカの日本法人として1990年に設立されました。それまでのお仕事のつながりのあった方から「人を探しているそうだけど、橋口さんに向いているのでは?」と紹介されて面接を受けることになりました。そうしたら当時の副社長(イタリア人と日本人のハーフ)と面接で意気投合して、話はとんとん拍子に。会社は’90年の春設立で、私はその年の夏に入社し販売促進の部署に配属されたのです。25年前は人数も少なくて、このころの私は営業的なこともこなしていましたね。これが今でも続く私とイタリアとの係わりの始まりとなります。

25年経った現在では、イタリアの仕事仲間たちも時間に正確になっています。ですが、その頃のイタリア人の同僚や上司は、時間も日本人のように正確ではないし、話をしていても論点がズレてしまう…。会議は長いし、自己主張はものすごく強い。私はとにかく若かったこともあって、生真面目な性格でしたから、日本とイタリアのギャップに「一体なんなの‼ どういうこと!?」の連続でしたね(笑)。
仕事を始めて間もなく彼らの一人と、ギャップの話になった際、「だって仕事があっても、街にかわいい女性がいたら声を掛けなきゃ」なんて言うんです。そのとき「あ、そういうライフスタイルの国なんだ」と気付いて、これはいくら私が真正面からぶつかっても負けてしまうなと理解しました。その頃はいまほど日本にイタリア料理店もありませんでしたから、距離だけでなく感覚的にも遠い国。でも、その不思議なイタリアの感覚が私に徐々に染みついてしまったんです。

ジョルジオ アルマーニの哲学に感動!

ルックスオティカ(ミラリ ジャパンの親会社)では、数々の著名ブランドとともにアイウエアを生み出しています。そのなかでも、最初に橋口さんが衝撃を受けたのがジョルジオ アルマーニのアイウエアだったといいます。

橋口さん:
私が入社したとき、ミラリ ジャパンでは5ブランドほどを展開していたと思います。イタリア人の考え方がまだ理解できていなかった当時、仕事に悩みもありました。そんななか、とにかくすごいと圧倒されたのがジョルジオ アルマーニのアイウエアでした。

モノ作りはもちろん、ブランドのアイデンティティにおいて、ジョルジオ アルマーニは絶対に妥協しません。この点は本当に素晴らしい!と思いましたね。また、この時代のブランドとしては初めてワールドワイドでアイウエアを展開したのがジョルジオ アルマーニでした。
広告の完成度も非常に高いハードルを要求されていたのを覚えています。私は、ここでブランドビジネスの難しさと楽しさを知ったのです。ジョルジオ アルマーニのアイウエアは理屈ではなく、本当に繊細でキレイなデザインでしたから。

マッシュのワンポイント
アイウエアメーカーが他社ブランドと製品を共同開発する場合、契約によっては展開する国や地域を限定することがあります。25年前はそうした限定的な展開が一般的でした。ジョルジオ アルマーニのアイウエアは全世界ですべて同じ製品を展開する戦略をはじめて採用したのです。
こちらはジョルジオ アルマーニのアイウエアの最新作。今年5月に原宿で行われたミラリ ジャパンの展示会で紹介されました。
こちらも同じくミラリ ジャパンの展示会から。今回のコレクションでは落ち着いた色使い、異素材の組み合わせが洗練された印象です。

ミニマリズムが子供時代に養われていました

橋口さんがジョルジオ アルマーニに強い関心を持ったのは実は子供時代の着こなしにも関係があったようです。どんな子供時代を過ごされたのでしょうか?

橋口さん:
私の母はシンプルなものを好む人でした。特にファッションに興味がある人ではなかったのですが、着せてもらえたのは白、黒、ネイビーばかり。ここに母の思いがあったようです。「女の子だからと言って花柄を着せたくない」と、子供の私に大人っぽいものばかりを着せていました。華美な着こなしをしないことで、知らないうちに母からミニマリズム(形態や色彩を最小限度まで突き詰めた最小限主義)を教えられていたのでしょうね。だからジョルジオ アルマーニのミニマリズムに衝撃を受けたし、魅力にも気付けたのかもしれません。
ミラリ ジャパンにはその後、毎年新しいブランドのアイウエアが登場し、そうしたプロダクトを通じて次々に新しい知識や経験が蓄積できました。ブランドごとにこだわりがあり、マーケティング、PRなどの手法もそれぞれのおもしろさがありました。

アイウエアという言葉を日本で定着させました!

ミラリ ジャパン発足当初から「アイウエア」という言葉を強く啓蒙してきました。いまではアイウエアと言って通じるようになりましたが、当時はこのキーワードが認知されていませんでした。ファッション誌のスタッフたちからも分かりやすく「眼鏡」と書きたいんですが…なんて言われたりもしましたよ。
私たちは視力補正の機能を持つ道具ではなく、目元を飾るもの、つまりファッションアイテムとして捉えていたから、この言葉にこだわったのです。製品開発では機能はおろそかにしませんが、そればかりではなく、洋服のコレクションのデザインをアイウエアに投影するなどファッション性の表現に苦心していました。

いつの間にか、イタリア的なライフスタイルに共感

仕事の経験を積む中で、イタリア出張に行くと日本とイタリアのハーフの副社長が、ご家族と過ごさせたりしてくれて、イタリア人の考え方や生き方に共感するようになったのです。いつしか、広報、PR、マーケティングとすべてをこなしていましたが、2005年にミラリ ジャパンを退社し、その後約1年株式会社凛に席を置かせていただき、翌年2006年に自分の会社を設立しました。
社名はモードゥス ヴィベンディ。これはローマ帝国時代のイタリアの言葉と聞いています。本来の意味は「自分の人生を自分なりに生きる」ですが、転じて「時代にあった生き方をしなさい、臆することなく人生を謳歌していきましょうよ」というニュアンスもあります。イタリアでは最高に素敵な言葉なのです。様々なご縁が重なって、いろいろな人に助けられましたが、イタリア人との出会いは本当に大きかった。いつしか、私もそうした生き方をしたいと思うまでになったのです。

原宿、表参道に最初の事務所を開設

自分の会社を立ち上げて最初に自分のオフィスを持ったのが神宮前三丁目でした。2、3年はそこにいましたから、表参道には思い入れがあるんです。事務所へはいつも表参道駅からメインストリートを進んでラルフ ローレン表参道の横の道をずっとまっすぐ。あの界隈は一歩入ると大人のエリアの雰囲気があって、小さな個性的なお店などもあって歩くのが好きでしたね。

オリーブオイルソムリエの道へ

ミラリ ジャパンでのお仕事の経験から、独立した後もイタリアに関わるお仕事が多いそうです。そうしてイタリア文化に密接に関わっていく橋口さんは、2008年にはイタリア人の旦那様とご結婚をされました。ご主人とともにイタリアへも頻繁に行かれ、現地の家族の在り方やそこでの食事のスタイルなどにも理解が深まったようです。

橋口さん:
イタリアにはオリーブオイルが欠かせません。うちでは夫も使うし、テーブルに必ず置いてあります。現地に行って食べれば食べるほどおいしさも分かってきます。
イタリアンは和食に似ていて、素材の良さを楽しむのが本質。だから、サラダ、カルパッチョ、パスタなどなんでもオリーブオイルを調味料にしてしまうのです。幸い、私は毎日イタリアンでもOKなのでオリーブオイルも体にあっていたのでしょうね。

2012年にレストランでオリーブオイルソムリエに関する案内を目にしました。そのとき、直観で「新しい楽しみが広がるし、これは取得しておいたほうがいい!」と感じました。これはイタリアのAISOという機関が認定しているもので、研修は想像以上にハード。一週間、缶詰め状態でオリーブオイルを飲んだり嗅いだり。テストを受けて落ちれば追試を受けて。そんな苦労をして2013年にオリーブオイルソムリエの資格を取得出来ました。

※AISO認定のオリーブオイルソムリエについてはこちらに紹介されています。
https://www.aisojapan.com/home.html

橋口さん直伝!オリーブオイルの楽しみ方をお聞きしました

オリーブオイルとは?
紀元前1000年頃、中東が発祥と言われるオリーブオイル。オイルの中では最古と言われています。当時は、食することだけではなく薬としても使用していたほど、日常生活に密着していたオイルとして存在していました。
現在、オリーブオイルと言えば、「エキストラヴァージンオリーブオイル」が定着していますが、全てがエキストラヴァージンオリーブオイルではないことをご存知でしょうか。

エキストラヴァージンオリーブオイルとは?
100%の果実油。種からも果実から抽出できる唯一のオイルです。
一般的なオイルは製造する過程で、通常は溶剤などで抽出する科学的な方法がとられていますが、それとは対照的に手作業や機械的な手段により抽出され、また酸度が0.8%以下のもの。ポリフェノール、オレイン酸が多く含まれており、ポリフェノールが抗酸化に良いと言われているほか、オレイン酸がコレステロール値を下げるといわれています。

オリーブオイルの鉄則
選ぶ際は黒などクリアではないボトルを選びましょう。これは光によって酸化するのを防ぐための配慮です。
イタリアでは遮光されたボトルの販売がほとんどです。中には一流のものでもクリアボトルのものがありますが、それらは丈夫な紙箱に入っています。その場合、箱を捨てずにボトルを箱に入れて保管します。また、保存はシンクの下など光の当たらない冷暗所がベストです。でも冷蔵庫に入れると固まってしまうので、それは避けてください。
余談ですが、イタリアのレストランでは、他の容器に移し替えたオリーブオイルを客に出すことを禁止しています。これは品種がわからないオリーブオイルを出さないためであったり、酸化したオリーブオイルを食することを避けるためです。それほどイタリア人にとって、オリーブオイルはなくてはならない大切なものなのです。

美味しくいただく方法は?
ぜひ食卓に一本常備してみてください。サラダやお豆腐に掛けると味も壊さず、美味しくなります。お味噌汁に少したらすと味がまろやかにもなり保温性も高まりますよ。白身魚には塩とオリーブオイルも好相性。そのほか実は納豆にも合うんです。
高価なオリーブオイルは過熱して使うともったいないので調味料のようにそのまま味わうのがオススメ。また、開栓して古くなったオリーブオイルは過熱用にするといいですよ。

おすすめのオイルは?

オススメその1 「Tamaro Colle D’Angio (タマーロ コッレ ダンジョ)」
葉物野菜や ハーブに香り ルッコラ、クレソン などの野菜、豆料理 鶏肉、豚肉、 キノコ料理などに最適。果実味が強くてそのまま春菊やクレソンなど風味の強い野菜に掛けても負けません。通常価格2500円(税抜)
タマーロ コッレ ダンジョは原宿のブルックスカフェ原宿店で購入できます!

Colle D’Angio (コッレ ダンジョ)Colle D’Angio (コッレ ダンジョ)
ブルックスカフェ原宿店で販売しています。ブルックスカフェ原宿店で販売しています。

ブルックスカフェ原宿店(現在は閉店)
住所:東京都渋谷区神宮前6丁目4-1原宿八角館ビル1F・B1F
TEL:03-5778-3077
営業時間:9:00~21:00(20:30 L.O.)

オススメその2 「“Et”Olio EtL imoni (エ レモンフレーバー)」
こちらはレモンフレーバーオイル。魚料理、サラダ向き。なんとオリーブとレモンを石臼で一緒にゆっくりとペーストしています。こちらにミョウガ、トマト、オクラを合わせていただくと美味しいんです。意外ですが抹茶アイスにかけても絶品です。通常価格2000円(税抜)
こちらで購入できます → https://www.lacucinetta.com/SHOP/161170/list.html

表参道界隈でオリーブオイルを楽しめるお店は?

神宮前二丁目にあるアミニマさんは、とにかく料理のセンスがよいワインビストロです!先にご紹介した「エ レモンフレーバー」もこちらで使用されています。

“Et”Olio EtL imoni (エ レモンフレーバー)“Et”Olio EtL imoni (エ レモンフレーバー)
アミニマアミニマ

アミニマ
住所:東京都渋谷区神宮前2-5-6 アマデウスハウス1F
TEL::03 -6804-2846
営業時間:夜営業(月曜日~土曜日)17:00~23:00(L.O.22:30)、ランチ(土曜日のみ)12:00~15:00(L.O.14:00)
定休日:日曜日
モダンなパリのようなインテリアの中でワインと料理を囲んで美味しく楽しい時間を過ごせるお店です。土曜のみ営業のランチは2200円(税別)、ディナー予算はお1人様食べて飲んで、5,000円~6,000円位です。

オイルと素材の相性は?

上質なオリーブオイルは生産地が表示されています。日本でも知られているような有名な産地のオイルと、その地方の特産素材を合わせるといいでしょう。たとえば、肉料理の盛んなトスカーナ地方のオリーブオイルだと、ビステッカ(ビーフステーキ)が好相性だし、シチリア産なら魚介に合わせる。これだと分かりやすくて好相性です。

イタリアではみんなで集まっての食事が非常にポピュラーだそう。こちらはイタリアでクリスマスの際、橋口さんご家族が出かけたトラットリアの様子です。野菜サラダにオリーブオイルは好相性なのです。ここは、自分たちで作ったオリーブオイルなので瓶はクリアです。ご自宅での食事の場合、メニューはシンプルなものが多く、自分の菜園で作った食材を食べたりするんだとか。みなさん、食への情熱にあふれていてトマト談義で1時間話し込むなんてのもザラというから驚きです。

生活を豊かにするスマウリープロジェクトを発信

ファッションや食、家族のつながりなど、イタリアのカルチャーを熟知する橋口さんが、いまご友人と手掛けているのがスマウリープロジェクトです。その目的や活動について聞いてみました。

橋口さん:
スマウリープロジェクトは、海外、国内という垣根をこえて『日々をより豊かに暮らす』ことをテーマに、人とヒト、人とモノ、人とコトをつなげて情報を発信するプロジェクトです。
友人の大越さおりさん(大越食堂 女将)の二人で始めました。二人ともこれまでにラグジュアリーブランドなどのお仕事で優れたデザインや考え方を見てきましたから、やはりいいものを伝えていきたいと考えたのです。
日本には素晴らしい文化、伝統工芸など、よいものがたくさんあるのに、いまはそのよさが消費者に伝わっていないものが少なくありません。また、若いアーティストの発掘、海外アーティストのサポートなども活動に含まれています。このプロジェクトでは、そうしたモノづくりの背景にあるもの、作り手の思い、手に取る人の日常を連想しながら、それらをつなげたり、つながる場を提案したりします。これにより、作り手も受け手も笑顔になれたらいいなと思っています。

初イベントは外苑前で「オリーブオイル×和食」

橋口さん:
スマウリープロジェクトは日々の生活に結び付くことを意識しています。昨年12月、外苑前で開催した第一回のイベントではイタリア料理の代名詞となっているオリーブオイルと和食のペアリングを楽しんでもらうことで、日々の食卓のバリエーションを提案しました。イベントではテイスティングを含めた「オリーブオイルの講習会」、テーブルセッティングが学べる「食と空間演出」などのプログラムを用意しました。

スマウリープロジェクト大越さおりさん

橋口さんによるオリーブオイルの講習会。歴史やオイルの活用法などを紹介。

イベントで提供されたお料理。「あっさり魚介とお豆のマリネ」。和風仕立てのマリネをレモンのオリーブオイルとともにいただきます。(大越食堂女将作)

イベントで提供されたお料理。「冷めても美味しい玄米おにぎり」オリーブオイル、白胡麻、鰹節、お醤油、お塩で炊き上げられています。(大越食堂女将作)

イベントで提供されたお料理。「ほっこり旬のお野菜御汁」。たっぷり根菜ときのこのお醤油仕立て。オリーブオイルでうまみを引き立たせています。(大越食堂女将作)

ファッションのみならず、幅広いジャンルで活躍する橋口さんのような生き方に憧れる方は多いのではないでしょうか。オシャレになりたいだけでなく、健康的な食生活を意識される女性も多いだけに、橋口さんの活動は今後も多方面から注目を集めることでしょう。マッシュもさっそくオリーブオイルを購入して、食生活を見直したいと思います!


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