モコモコ博士の建物観察ゼミ
2014.08.12

第42回 アップルストア表参道

2014年6月、アップルストア表参道がオープンした。

6月の中旬(6/13/2014)、表参道の通りにまた一つ嬉しい建物がオープンした。これはなかなかいいっす。

アップルストア表参道外観
歩いていると引き込まれてしまう、外観はガラスだけの意匠。

工事中の「お知らせ看板」には建物の名称として「(仮称)表参道プロジェクト」としかなく、何が建つのかは不明だったが、設計者は光井 純・光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所(株)」とあり、竣工が楽しみではあった。いつまで経っても工事用の仮囲いの高さ以上の工事が始まらず、不審には思っていたのだが、竣工近くになって新たな「アップルストア」であることが判明。仮囲いが外されると、思いもよらなかったガラス張りの平屋建築(1階建て)が出現した。


表参道の交差点と言う立地に「平屋」という大胆さ。

伊藤病院とヒューゴ・ボス、オーク表参道が囲む信号機のある交差点の一角を占める敷地に平屋の建物とは、もうそれだけで大胆きわまりないのだ。この辺の建物は、敷地面積に対する床面積の割合(容積率)は法的に許容される目一杯を目指すのが常識とされるが、容積率?そんなもん眼中に無い、とばかりに立派なのだ。

歩道橋から見たApple Store表参道
平屋とは言え、建物の高さは3階建てとほぼ同じ。

近隣に著名な建築家の手による面白い建物が林立しているが、ここまで容積率を下げた建物はない。概して、お¥儲けが大好きなディベロッパーが参画する商業ビルでは容積率は法的に許される範囲内の最大面積を目指したがる。床面積あたりの売上高を気にしたり、多くのテナントを誘致しないとビジネスとして成立しないからだ。

お¥儲けの事業企画や建築企画が悪いと申しているのでは無く、企業理念や店舗コンセプトを優先させる企業の姿勢に敬意を払いたいのだ。テナントとして入っているのは「アップルストア」である。ショウルームは1階と地下1階の2フロアーのみで、他のテナントの入居はない。地上1階、地下二階建てのビルではあるが地下二階の使われ方は承知していない。この敷地と建物の所有者についても、建て主として「 MD 表参道特定目的会社」とお知らせ看板にあった以外のことは判らない。

1階ショールームの天井高と外壁3面を全面ガラス張り。

で、このビルの面白いところは1階ショールームの天井高と外壁3面を全面ガラス張りだ。ここまで思い切った計画は、ニューヨークのアップルストアにその例を見ることができるが、屋根の扱いが違うように思う。ニューヨークのアップルストアは屋根部分もガラス張りだ。

1階ショールームの天井高と外壁3面を全面ガラス張り
ここまで大胆にガラスを使われると外から見える内部空間は外部のように見える。

1階ショールームの天井高と外壁3面を全面ガラス張りだ
内部の天井が微妙に奥の方に傾いている。

建築材料としてのガラスは「圧縮には強いが引っ張り力がないもの」との40年前の知識しかない不勉強な私ではあるが、昨今の建築を見るとどうやら引っ張り力も期待できるようになっているらしい。ガラスには強化ガラス、遮熱ガラス、低反射ガラス、等々一昔前には無かった製品が多用されている。

しかしながら日本ではガラスが構造躯体として使われた話は聞かない。このアップルストアの分厚いガラスは構造躯体として屋根を支えてはいないと思う。5層の合わせガラスで厚みは約50ミリ程だろうか、実際に定規を当ててないので判らないが、かなりの厚みがあるが、屋根を支えるための厚さではない。同じ厚さで控えの小壁のようなガラス板が表面に直交して配置されているが、これはガラス壁面に当たる外部の風圧力に抗する目的のものだ。

Apple Store表参道の分厚いガラスは5層の合わせガラスで厚みは約50ミリ程だろうか
外壁のガラス板が風圧で湾曲しないようにする控え壁のガラス。

地震の水平力に抗する耐震壁はガラス以外のところが負担している。ショールームの裏に回ると判るがこの建物の平面は矩形では無く T 字(ないしは L 字)型のように思える。図面を見ていないので正確なところは判断しかねるが、矩形のショールームとその背面空間を南東側の、多分事務スペース空間が後側からささえているように思われる。

多分事務スペース空間が後側からささえている
裏側の立面を観ているがツタを這わせている壁の奥側に建物の一部が見えている。

ガラスの固定
ガラス壁の内側には空調のための吹き出しが
床に埋め込まれている。
ガラスの固定
ガラス壁のコーナー部分のディテール。

屋根は軽い鉄骨で、鉄骨鉄筋コンクリートの奥、東側のコアのような部分からからキャンティレバー(片持ち梁)で張り出していると思う、先細りの V の字を寝かせたような断面形状で強固なショールーム背面コア部分から突き出させている。その先端や両脇でガラス外壁の上端部を固定している。ショールームの天井を見ると微妙に勾配があるので、注意して見てちょうだい。屋根の勾配を見たいところだが近隣のビルから屋根をチェックできるところはなかった。

Apple Store表参道の屋根
屋根の鼻先部分、細く薄く見せている。美しい納まりである。

Apple Store表参道の屋根を支えている部分
建物の南側奥の壁と屋根の取り合い部分。単純明快で美しい。

Apple Store表参道。ショールームの天井を見ると微妙に勾配がある
天井に空調などの吹き出し口がないだけで、ここまで美しくなる。

いずれにしても構造設計担当者泣かせの計画ではあるが、その分、他に類のない建物となっている。

螺旋階段も外壁と同じような強化ガラスで構成された鉄骨の階段。

ショールームは地上1階と地下1階の2層に分かれてある。地下1階の床から地上1階の床までの高さを階高と言うが、通常の階高よりも高い。それは、1階の床を支える梁のせい(梁の上面から下面からまでの高さの寸法)が大きいからだ。地下階に1階の床を支える柱を作りたくなかったのだと思う。柱を立てるくらいなら階高を上げる方がいい、との判断だ。その分、中央の螺旋階段は長く大きなものと成った。この螺旋階段も外壁と同じような強化ガラスで構成された鉄骨の階段である。

Apple Store表参道の螺旋階段も外壁と同じような強化ガラスが使われていた
ステンレス仕上げを多用した地下への鉄骨螺旋階段。踏み板と手摺りの腰壁はガラス。

Apple Store表参道地下1階
柱のない地下1階のショールーム。

Apple Store表参道の階段ガラスの断面
階段の段板と蹴込みには磨りガラスで、
下からの視線を遮っている。
ガラスが至る所で使われている
きれいに面取りを施した手摺りのガラス製の腰壁。

Apple Store表参道外壁部分
北側(原二本通り側)の外構には何気ない植栽がいい感じ。

Apple Store表参道
巨大なアップル・マークが螺旋階段の上部に吊されている。

この新たなアップルストアはマッキントッシュ製品の日本での旗艦店で、販売よりも新製品やその使い方の紹介を目的にしているような印象である。表参道駅のA-2 出口を出ると直ぐ右側にある。待ち合わせかたがた気候や天候に左右されず相手をショールームで待ちながら、新製品で遊ぶことができる。新たな表参道の待ち合わせ場所として「A-2 出口前のアップルにいる」方がよりオシャレな気がするが、どう?

Apple Store表参道A-2 出口付近
表参道での新たなランドマークであり、待ち合わせ場所としても最適。

 

ビー) 知ってるー?アップルストアの前にはね・・・
カー) 知ってるよ「マクド」があったんだよね!
ビー) あ・・・
カー) いや、だからマクドナルド、マクドでしょ。
ビー) そこは「マック」って言ってぇぇぇぇぇぇぇー!!!!!!


 

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