第35回 「こどもの城」
「こどもの城」は、子どもたちの為のビルです。
城と言うイメージはない外観のデザインですが「こどもの城」です。中堅どころの組織事務所「山下設計」が手がけた総合児童センターで、1985年に竣工してますから既に築27年ですね。私、モコモコ博士の子供たちも母親に連れられて何度となく利用させて頂いた施設です。もう十数年前の話ですけどね。表参道の交差点から渋谷方面に歩いて、国連大学ビルのお隣、ほぼ青学の正面に建ってます。
一見して岡本太郎と判る彫刻が正面玄関前にあって、全く迷わずに来ることができます。子どもだけを対象にしたビルではなく、1,200人を収容する立派な「青山劇場」と最大370人の収容の「青山円形劇場」が併設されています。
私もこの円形劇場で何かの芝居を見たことがありましたが、劇場の造りはなかなかに革新的で、中央の円形舞台を360度客席が囲むと言う完全な円形オープンスペースです。日本初の円形劇場だそうです。建物に向かって左側筒状の外観を持った部分の中にあります。「青山劇場」のほうは、歩道と同じレベルの前庭オープンスペースを行くと正面にしゃれた英文の「AOYAMA THEATRE」の看板が有り階段を数段下がって入り口があります。
ピロティー形式で雨の日でも便利。
劇場のアプローチ部分は大きく解放されたパブリック・スペースを確保するために3,4階部分を浮かせ、ピロティーとしています。劇場を利用するお客さんにとっては雨に濡れることもなく出入りには好都合な計画になっていますね。通常の劇場には客席空間と出入り口の間にホワイエと呼ばれる緩衝空間を取って、開演前の人々の溜まり場として使われますが、この劇場ではこのピロティーを含め歩道からのアプローチ部分がその役を担っています。
たまにこの建物の前を通りますが、上演を待ち遠しそうに開演前の楽しそうな親子連れや若い女性の姿を目にします。この劇場はオーケストラ・ピットまである本格的な劇場らしく、ミュージカルなどが多く上演されてるみたいですね。残念ながら私は入ったことはありません。
この建物の特徴の一つは、開口部と言われる窓の部分に曲面を使っていることです。正面の3,4階部分は矩形の2層分の空間ですが、開口部だけを緩やかにS字にカーブさせています。このカーテンウォールの開口部は、正面と真反対の劇場側にもあります。もう一カ所、建物の西側(正面から見て左側)の立面も同じデザインで構成されています。
この曲面が「こどもの城」としての建物の顔になっていますね。平面の冷たい印象を避け、柔らかな印象を与え、子どものための建物であることを表現しています。もう一つ、この建物に子どもをイメージさせるモノがあります。円形劇場を囲う筒状の外壁に、縄跳びをしている子どもを置いています。作者は福田繁雄のようです。「日本のエッシャー」と称された方で世界的なグラフィック・デザイナーですが。錯視やトリックを利用したアートにも造詣が深く楽しいアート作品を残した人です。平成21年(2009)に76歳で亡くなっています。
彫刻もなかなかなんです。
西側の外部にはいくつかの面白い彫刻が配置されていますが、シンボルモニュメントとして正面に、言わずと知れた岡本太郎の「こどもの樹」があります。岡本らしい強烈なオーラが青山通りにまで流れ出してます。彼の自宅はここから歩いて10分ほどの所にあり、この「おもてサンド・たてもの観察ゼミ」でも取り上げています。
インテリアと東側アプローチ部分です。
建築的には、なかなかに面白い建物ではありますが、子供たちの遊びの内部空間は今ひとつなんじゃないの、との印象が少なからずあります。もっと明るく破天荒な企画があっていいような気がしますが、どうでしょう。内部は十数年前と全く変わっていないような気がしますね。色々変わってるのかしら、私の記憶も定かではありませんが、自分の子どもと一緒に来たときの印象と同じなんですよね。
管理運営にもう一工夫あると、せっかくの建物ですし、もっと有効に使えるんじゃないかしら。残念ばがら、レストランも何故か現在(2012年3月時点)は閉鎖中なんですよね。またこどもの城でお昼ご飯が食べたいのですが、どうにかならないかしら。
ここの事業主体は財団法人・児童育成協会で国立の総合施設としての位置づけになっています。
国の施設としては随分と頑張っている方なのかもしれませんが、残念ながら、なんか雰囲気が垢抜けないのよね。せっかくの建物なんですから、もうチョッと子供たちの為の工夫を見せて頂きたいな ~、というのがモコモコ博士の印象、感想ですね。
っと、忘れるところでした。この建物の6,7階に宿泊施設としてのホテルもあるんですよ。一泊¥5,000 0~10,000 で泊まれるみたいです。