第40回「サニーヒルズ (微熱山丘)南青山店」
凄い木造が表参道に建った!サニーヒルズ南青山店。
「凄い木造が表参道に建った」とのうわさを耳にしたので、早速、観にでかけました。ホテル・フロラシオン青山の正面(東京都港区南青山3-10-20)にあります。ビル名は「サニーヒルズ(微熱山丘)南青山店」、パイナップル・ケーキを売る、台湾では有名なお店らしいです。
カフェになっているのかと思いきや、パイナップルケーキだけを売るお店です。ただし、嬉しいことにこのケーキを1つとお茶を無料でご馳走して頂けます。建物を見に行って、好きなだけ写真を撮らせて頂き、ケーキとお茶までご馳走になり、申し訳ないので1箱(5個入り¥1,500)を購入してきました。ケーキのお味は、私の口には、もう少しパイナップルの味が強くてもいいんじゃないかしらの印象ではありますが、品の良いお茶請けではあります。
木組みは単なる装飾ではなく、緻密に計算された構造体。
で、建物ですが「っと〜、クマさん、やってくれるじゃないのよ」でした。設計は当代人気の隈研吾さんです。表参道では既にご紹介している「ONE 表参道」や「根津美術館」などを手がけています。木造3階建てと聞いていたのですが、正確には鉄筋コンクリート造一部木造で、地上2階・地下1階です。アプローチ部分が建築基準法的には地下1階になりますので、素人目には3階建てのような印象ですね。
鉄筋コンクリートの外壁を背にしている木組み部分(北側路地の部分)は単なる装飾に見えてしまうのですがホテル・フロラシオン側の東面(正面ファサード側)を見て「ん?違う、これは構造体だ」と思い直します。東面の木組みを注意深く観察すると、2階の床を支えているのが判ります。直ぐに「これは一体どう言う構造計算をしたんだろう」との疑問が湧きます。鉄筋コンクリートと木造の躯体が同一平面上にあって、かなり面倒な構造の解析がなされたものと推察できます。
複雑な木組みの中にもユニット化されたパターンの繰り返しがあるんじゃないかと思って、道の向こう側に渡り、遠目に見ましたがそのようなパターンは認識できませんでした。通常の木造だと垂直に伸びる柱のような縦材があるのだが、ここにはありませんね。全ての構成材が前後左右に角度を持って傾斜しています。6センチ角のヒノキ材の延長部分や立ち上がりの交差部分には、メタル製のジョイントが多用され、構造的には強そうな印象を持ちます。
垂直材の柱に、梁と呼ばれる横架材と水平荷重に抗する筋交い入れて面を構成するのが一般的な木造躯体ですが、面としての木造ではなく3次元での立体構成としている点が驚きの新たな躯体構成です。地震などの水平力に対し、鉄筋コンクリート壁構造と相まって縦方向にも横方向にも強い構造となっています。構造計算はどのような解釈でやったんだろうか、構造設計には疎い意匠設計者の私には判らないんですよ。
隈研吾独特の大胆さが10年後、どう評価されるのか楽しみです。
木材は建築材料としては非常に優れた材料で日本では多用されてきています。ご承知の通り、世界最古の木造建築は法隆寺で1400年を超えて現存しています。鉄筋コンクリートの建物よりも耐用年数は長いと言えるのですが、雨や湿気対策を怠るとその寿命は極端に下がります。そう、腐るんですよ。このサニーヒルズは大丈夫なのか? 雑誌「 ja・木の建築 」(spring 2013 89 新建築社)刊には、使われている「6センチ角のヒノキは、不燃処理の上、含浸性撥水材塗布、小口水性塗料塗装」とあります。要するに燃えないように、水分を吸収しないように不燃処理し撥水材を染み込ませてあると言う事です。
大丈夫かな〜、寿命はどのくらいだろう、延焼の怖れのある部分にむき出し、雨ざらしの構造躯体としての木材でしょ。確認申請も消防関係法規も通っている事だし心配には及ばないのだろうが、私にはできない設計ですね。
不燃処理がよく判らないっす。具体的に何をどうすれば木材が不燃化できるんでしょう。通常であれば燃えて炭化するとその内側は燃えないのが木材で、燃えしろとして30ミリほどをみて構造躯体の断面の大きさを決定するんですよ。今回のサニーヒルズでは燃えしろ分の木材の断面しかないのよね。含浸性撥水材塗布と言うのも耳慣れなですね。小口には水性塗料が塗装されているようで小口をこれで守っているのかしら。
表参道の交差点そばに建っている「One 表参道」の木製ルーバーは既に竣工当初の清々しい木材の色はなくドブネズミ色に変色しています。サニーヒルズの木材には変色はないのだろうか。色々心配ではあるのですが、最近、この手の建築を多く手がけている隈研吾さん独特の大胆は今後10年を経てどのような評価がなされるのか楽しみではあります。
不思議な点の多い今回のサニーヒルズですが、観に行かれるとビックリする建物です。無料でお茶とお菓子を頂けますし、是非とも散策やデートのルートにお入れ下さい。裏手には、北河原温さん設計の「395」もあります。2つのぶっ飛んでる建築を観るのは一興です。
参考記事:モコモコ博士の建物観察ゼミ 第34回「395」
カー) いつまで骨組みしてるのかな~と思っていたら、実は完成してたね。笑
ビー) 僕はちゃんと分かっていたよ。
カー) なにぃぃぃぃぃーーー?ビーは勉強熱心だね!
ビー) サニーヒルズのパイナップルケーキが美味しいってことをね♪
カー) ミ(ノ_ _)ノ=3 そっちね・・・